翻訳アプリが教えてくれないこと

前回に引き続き、アイヌの文化についての記事です。

前回の記事「カムイとは…」はこちら

前回のちらっと紹介した「ウポポイ民族共生象徴空間」では、アイヌ語が公用語になっているということで、アイヌ語をいろいろ教えてもらいました。

ここで紹介したいアイヌ語を2つ!!

イヤイライケレ

「ありがとう」という意味。感謝を述べるときに使う言葉。

イランカラプテ

挨拶をするときに使う言葉。日本語では時間によって「おはよう」「こんにちは」「こんばんは」と使い分けるが、アイヌ語では時間に関わらず、「イランカラプテ」と言うそうです。

ここまでやとめちゃくちゃ普通のことなんやけど、この二つの言葉に込められた意味がこれまた深かった。

『イヤイライケレ』をそのまま訳すと、「死ぬほど嬉しい」となり、文字通りそれはもう心の底からの喜びを表す言葉だそうです。アイヌ民族は狩猟民族で獲物は神様からの贈り物と捉えているため、獲物を捕らえたときにこの言葉を神様に向かって唱える、そんな言葉だそうです。

『イランカラプテ』には、「あなたの心に触れさせてもらう」という意味があるそう。時間に関わらず同じ言葉を使うのは、どの時間だろうがその人の心に触れることへの丁寧な気持ちの表れなのだろう。

ここで言いたいのは、どちらも単純に日本語に訳しただけだと、その言葉の重さが伝わらないということです。

「お菓子食べ切れられへんかったから、余りあげるわ。」「ホンマに!?ありがとう!」

という気軽な”ありがとう”の状況では同じテンションで使うわけにはいかず、

「お菓子食べ切れられへんかったから、余りあげるわ。」「ホンマに!?イヤイライケレ…🙏(深々とおじぎ)」

くらいの意味合いが込められてくる。

「こんちは!今日も元気にいこう!」のようなテンションで「イランカラプテ!」とは言えないかもしれない。


翻訳アプリなどを使えば、知らない言葉が瞬時に自分の知っている言葉に切り替わるが、だからといってその言葉の奥底まで知ることはできない。もちろん表面上だけでも大義でも意味がわかると会話もできるし話も理解できるし、そこを否定するつもりはないけど、その言葉からその民族や国民の文化や考え方が伝わってくる部分もあるから、他(多)言語の学習はおもしろい。

前述のアイヌ語2つだけ見ても、アイヌの人々がとても丁寧に身の回りのものに接しているのかが感じ取れる。

日本語の「ありがとう」とポルトガル語の「オブリガード(ありがとうの意)」の音が似ているからこの2つの言葉の間にはどちらかがどちらかを取り入れたのではという諸説があったりするが、もともと「ありがとう」は「有(あ)り難(がた)う」から来ていて、起こり得ないことが稀に起こったときに感謝の意を示す言葉が語源と言われている。一方「オブリガード」は「obrigado」で、これは英語にもある「obligate(義務付ける)」という意味に由来するそうで、語源をたどると少し意味合いが変わってくる。

ただここからもおもしろくて、「義務付ける」もこれまた日本語で言えばそう訳されるだけで、もう少し深掘りすると「義務付ける=繋がりを持つ」という意味があり、ポルトガル語ではこの繋がりは「神様との繋がり」であり、だからこそその「神様との繋がりに感謝する」ことから「obrigado(ありがとう)」となったという説もあるそうです。

言葉って、発されたり書かれたものだけじゃなく、その下には歴史や発したり書いたりしたその人自身が込めた想いが詰まっているんだなと、アイヌの言葉を学びながらふと感じたわけです。

昨今は特に誹謗中傷が至るところで起こっているのを目にする機会が多くなったけど、自分も含めてもう一回その人の心の奥底を覗けるように聞き手も努力する必要があるのかなと思っています。人にはタイプがあって、感情的に言葉を発したり、一回考えて整えてから発する人もいるし、発することさえ苦手な人もいる。それはただただタイプなだけで、自分と違うから文句を言ったりイライラしたりするのは違うのかなと思う。もちろん、伝える側もより自分の考えに沿った伝え方をする必要があるときもあるしね。

少しずつでもいろんな言語に触れていって、いろんな考え方や文化に触れていきたいなと、そんな世界一周の仕方もあるのかな、とふと思ったのでした。

セカダイ運営メンバー けいすけ

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